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2009年2月 4日 (水)

JIYU-KENKYU vol.1 報告

「JIYU-KENKYU」〜世界激場プレ勉強会〜
2009年2月1日(日) @福岡市美術館
辻井 喬 『ユートピアの消滅』 集英社新書、2000年
報告:みねまいこ

JUYU-KENKYU vol.1 議事録
2月1日(日)12:30〜14:30まで、福岡市美術館、カフェなかむらで、辻井喬『ユートピアの消滅』を読み、それについて議論を行いました。参加者は、佐藤直樹、TUEさん、いちごさん、岩本さん、吉田さん、聡文三みねまいこ、計7名でした。議論後の、各自のちょっとした感想、意見など一部を報告します。

みね:YOU TUBEで辻井喬先生の講演の様子をみたけど、めちゃめちゃかっこいい!80代のはずだけど、60にしか見えない。はっきり申し上げて思いきり好みでした(一同、笑)!そんな辻井氏が信じたことのあるユートピア(=社会主義)ってのは、彼自身の中で非常に大きなトラウマになったんじゃないかと思うんです。彼だけでなく誰もが…世界中の知識人にとって、国ができた当初は、ソ連はユートピアだったんじゃないかと思うけど…。そんな大きなトラウマがあったから、ユートピア思想の持つ限界点を世界史的に整理して、それでももう一度ユートピアを望むことの重要性とか、今ならどんなユートピア思想が有効か?そのような視点でもって、辻井先生はこの本をお書きになっていたと思いました。じゃあ、いきなりで悪いんですけど、皆さんにとって、ユートピアってどのようなものですか?もしあれば、お聞かせ下さい。
吉田:自分の身のまわり、自分の住む街を変えたいとか、福岡の音楽シーンを変えたいとか、そういった身近なことから変えていくことが、自分のイメージするユートピア的なことだとは言えます。ユートピアって、日常生活を変えない限り、何も変わらないというか…。
聡:本には「民主主義はユートピアの解毒剤、ユートピアのない民主主義は魂を入れ忘れた仏」とありましたよね。ある大学で行われたアンケートで、「あなたにとってユートピアとは?」という質問があったそうです。それに対して学生は、どう答えたかと言うと、解答の選択肢が「近代的な西欧の市民社会」「沖縄の祝祭空間」「心の中にあるユートピア」「身近な家族」で、中でも、「近代的な西欧の市民社会」は人気がなかったらしいんですよ。西欧社会をユートピアと考える人はいなかった。人気があったのは、「身近な家族」だったそうです。ところで「沖縄の祝祭空間」っていう解答の選択肢は何なのでしょうかね?
TUE:それは、南洋思想とかでですかね?
佐藤:沖縄の友人が小学生だった頃、学校の帰りにどの家でごはんを食べて帰っても良かったそうです。それがユートピアっていっちゃあユートピアだったのかなとは思います、「子供は皆で育てる」という、ユートピア。
いちご:今回のJIYU-KENKYUで、辻井喬の『ユートピアの消滅』を読む前に、小説を3册読んでみました。はじめて彼の作品を読んだけど、小説は面白かった。ただ、主人公の男性が行く先々に愛人がいるの!どの小説でも共通して主人公には愛人がいるの!そこがなんでなのー?!とは思ったけど(一同、笑)、でもすごく面白かったの。
そう、小説は身近なことが書かれていたので、わりと理解し易かったのに、だけどこの『ユートピアの消滅』は、政治とか、知らないことばかりが書いてあって読んでいてとにかく難しかった!!今日の報告もわからないことがいっぱいあったし。
吉田:そう。辻井喬が読者に要求している、この本で前提されている知識ってのがないと、難しいよね…。
佐藤:それには、たぶん二つ理由があって、ひとつは、辻井自身が日本人の中でも非常に特異な感性を持っているからだと思う。西武グループの中でも経営者として彼だけでしょ、まともな人間は。他の人は….(笑)。まず、彼の中には日本人があまり持っていないような歴史的な意識がある。せいぜいわれわれの歴史意識では明治で切れててそれ以前はない、分断がある。ところが彼の中には「西暦」の時間が流れていて、大きな世界史の中でものごとを捉えられる能力があるってのがひとつ。その違いは大きい。たとえば日本には身の回りの人間関係のことしか描いていない小説が多い。そこに歴史意識なんてない。ところが、辻井は大きな時間の流れで考えることができる。だから彼の小説にもじつは、今回のテキストと同様に、歴史意識が流れているんじゃないかと思う。あと、もうひとつはね、彼自身がつねに世界史の中心にいたということ。セゾングループの経営者として各国の要人と会える立場にいた。通常われわれが絶対に経験できないようなことを経験している、そんな特異なポジションにいるっていう違いもある。つまり、二重に特異だから、読んでて難しいと感じる点はあると思う。ただし、文章は極めてうまい。こんな文章が書けたらいいねー!

Jiyukenkyu11_4
(撮影:佐藤直樹)

みね:岩本さんは福岡で自主音楽イベントをなさっておられますが、そんな大変な企画運営を何年か続けていらっしゃるというのは、ご自分の中にユートピア的なイメージがあって、それでがんばっていらっしゃるんじゃないかと思います。いかがでしょう?
岩本:そうですね。違うジャンルの音楽を並べてDJイベントをやっているのですが、異種の音楽が出会うときの面白さ、自分の知っている世界だけでなく、別の出会いがあるから、やっている。新しい出会いから、さらに世界が広がるのが面白くて。
聡::三島由紀夫が70年代に割腹自殺したことが、この本にも出ていましたよね。彼は結局なにがやりたかったんだろう?まほろばの国ってあったけど…だけど僕にはいまいち三島の思想がよくわからない。
いちご:わたしはこの本の中で、三島由紀夫だけわかった!
みね:あのね、歴史学者の阿部謹也さんから話を聞いたことがあったけど、割腹って時代劇のようにはうまく…実際は筋肉が硬直してばっさりいかないらしいよ〜それでね(嬉々として説明が続く)。
聡:みんなが嫌がってるから、そこらへんでやめなさい!!(一同爆笑)
TUE:僕は基本的に、三島はエリートだったと思います。でも普通の日本人は、彼が憂いたような「アメリカ化」は特にしていなかったんじゃないかと思うんですよね。
佐藤:僕はね、日本人はずっと近代化していないと思っています。表面的にはしていてもね、根本のところは変わっていない。外ではフェミニズムを教える人(男)が家に帰ると「あなた、ご飯にします、お風呂にします?」と妻に世話をさせるのは珍しくないし、外ではフランス哲学をやっているのに、家では御歳暮とか御中元とか日本の古い因習を大事にしていたりね。だからね、たしかに日本人はアメリカ化していない、表面的にはそうみえてもね。だけど、彼は正真正銘の近代人だった。だからこそ、非常に大きな危機感を持ったんだと思いますよ。しかし、普通の日本人は二重生活を送っていて、実は内と外を使い分けてる。
TUE:ところで、1982年くらいだったと思うのですが、日本がふっと突然明るくなった時期があって、バブルのちょっと前です。あれは一体なんだったのだろう?いまふと、思い出したのですが。三島事件や連合赤軍の70年代の呪縛が、ふっととけたような。ほんとに一時期、妙に明るかったんです。
佐藤:ポストモダンの頃だよね?その頃、ちょうどポストモダンとよばれる…本当はもっと前から始っていたんだけども。ポストモダン(近代を否定、乗り越えようとする動き)と、日本のプレモダン(前近代)が妙に相性が良かった。近代的な枠組みを越えようという意味では、両者は同じものだから。
聡:経済人としての堤清二(辻井喬)は、その頃まだ一部でしか知られていなかったような人たち、アンディー・ウォーホールとか、糸井重里らをいち早く起用してPARCOの広告を作っていたそうですもんね。それがねー、今見てもすごいんですよ。
一同:おお。 (以上、一部掲載)
Jiyukenkyu12_3
(撮影:佐藤直樹)

今回テキストの他に参考文献や資料として取り上げたもの:
ジェームズ・フレーザー『ソビエトの絵本1920-1930』リブロポート、1991年。
William Klein “PARIS+KLEIN” NewYork:Distributed Art Publishers,2003.
『美術手帖—ベルリン、ラスト・ユートピア−』 Vol.51 No.767、美術出版社、1999年。
Harald Hauswald / Lutz Rthenow“Ost-Berlin: Leben vor dem Mauerfall”, Berlin: Jaron Verlag, 2005.
『ウーメン イン パンクロック(DVD)』Columbia、COBY-91106、2005年。
『いちご白書(VHS)』ヘラルドポニー株式会社、1987(1970)年。
山本直樹『レッド』1巻、講談社、2007年。

次回「JIYU-KENKYU」予告
2009年3月1日(日)12:00〜
@福岡市美術館 カフェなかむら
テキスト辻井喬『憲法に生かす思想』、新日本出版社、2008年。
報告者:聡文三(予定)
本を事前に読んでいただければ、どなたでもご参加いただけます。たくさんの方のご参加をお待ちしております。
参加ご希望の方は、sekai_gekijou@yahoo.co.jp2月27日までに、ご連絡ください。

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